今回は、昨日説明した注意資源をビジネスに活用する場合の注意点を書こうと思います。
昨日の記事では、人が行動するときに注意を払っていて、その容量が決まっているという話をしました。
飛び込みセールスや電話営業の経験がある人なら実感できると思いますが、いきなり売り込みをされても拒絶されるのがほとんどです。
突然、売り込まれた方は、会社のやり方や商品を拒絶しているのですが、多くの人が自分を否定されているような気持ちになって、次のチャイムや電話番号を押すことが嫌になります。
どうして拒絶ばかりされてしまうのか具体的に考えたことは、無いと思います。
これはすごく簡単なことで、新しい情報を受け入れる余裕が無いだけなのです。
よくお年寄りを狙った詐欺商法が、ニュースにとりあげられますが、これはお年寄りが、知識不足だからとかぼけているせいではなくて、情報を取り入れる容量に空きがあるせいです。
オレオレ詐欺に引っかからない都道府県で、大阪が1位になった過去がありますが、大阪の住民が疑い深いからではなくて、自分に関係のないことまで関心を持つ癖があって、いつも容量が満タンのせいだと思います。
テレビ中継などをしていると関係ないのに平気で割り込んだり、見知らぬ人に飴をくばる人種だからです。
お金にシビアだということも原因ではあるでしょうけれど・・・。
セールスをするときに、一番気をつけなければいけないのは、相手に聞く耳を持ってもらうことです。
聞く耳を持ってもらうためには、その情報が自分にとって有益であると感じてもらわなければいけません。
有益であると感じてもらうためには、その時に持っている価値観とは違う価値観に興味を示してもらわなければいけないのです。
その為には、既存の価値観を壊す必要があります。
腕時計を売るときに時間を確かめる道具としてではなく、装飾品やファッションとして売るような感じです。
現代では、時間を確かめる道具として購入する人の方が少ないでしょうけれど・・・。
虫歯を治療するだけの歯医者ではなく、審美治療のような虫歯とは関係のない治療を提案するのもそのひとつかも知れません。
自分が売り込みたい商品やサービスがあるのなら、すでに持っている商品やサービスに対して機能の優位性や経費削減などを訴えてもお客さんの価値観が壊れることはありません。
その説明は、今あるものの延長線上にしかないからです。
価値観が壊れなければ、注意資源の容量は満タンのままなので、自分の商品が割り込む余地はありません。
コピー機の販売を考えてみることにします。
ほとんどの営業は、ランニングコストや時間短縮、仕上がりのよさなどの機能の説明をしますが、先ほども言ったように、それでは現在利用しているコピー機の会社に新しいコピー機の買い替えの為の営業を代わりにしているようなものです。
コピー機を一台交換することによって、社員の動線などの見直しや書類作成に対する意識改革、プレゼンテーションのあり方や効率の悪いOA機器の見直しまで提案できるかも知れません。
機械ひとつといっても24時間文句も言わずに働いているという事実をアピールすることによって、総務から人事に決裁権が変わるかもしれないのです。
そういったことをシミュレーションしながら、購入申し込み書に印鑑をついてもらっている場面から逆算すれば、最初の切り口が、これまでとはまったく違うものとなるはずです。
是非、そういった観点で営業を見直してみてください。
その為には、まずあなたの価値観を壊す必要がありますが・・・。
300字小説 第79回
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『切れた糸』
最後の1枚をたたみ終えると、正美は振り返り、ヒロシに視線を向けた。
その目は、赤く、涙で溢れていた。
「妻で母で、パートのおばさんでしかないの?」
ヒロシは、予想もしていなかった正美の姿に返す言葉がなかった。
「あなたは、私のことを秋山家の家政婦としか思ってないんでしょうね」
「家政婦なんて言うてへんやろ!」
「秋山家に嫁に来て、母親になったんやから当たり前のことやないか」
「お前は秋山正美であって、独身のときと同じように考えるほうがおかしいんや」
ヒロシの言葉には、砂粒ほどの愛情も感じられなかった。
長年連れ添った夫の顔がまったく知らない顔になっていた。
その時、わずかにつながっていた心の糸が切れるのを感じた。
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